BOOKレビュー 北森鴻氏追悼 [BOOKレビュー]
あれから5年も経ったんですねぇ。
文庫派の私にはようやくその波が追いついてきました。
京都の貧乏寺に巣食う(笑)元泥棒の有馬次郎が活躍する京都限定ミステリー。
他のシリーズとは違ってコメディ色が強く、強引な部分もありますが、
有名な「ぶぶ漬けでも・・・」の台詞はなぜ生まれたかなど、こと考察については侮れない。
それにしてもムンちゃんはどこまで迷惑な存在なんだろう・・・
こちらは音をメインテーマとしたミステリ。
義理の兄・最上圭一が残した音のメッセージの謎を追うリツ子。
その先々にはそれぞれの小さな物語があり、
さらにその先には彼女自身に関わる大きな秘密が・・・。
所々に伏線が張られていたので、最上圭一の死の真相は惜しくもかすっていました。
が、実際の真相は・・・なんか後述の雅蘭堂店主・越名集治の姿がだぶって(笑)
そして最後の場面。
うさぎがどうなるか明かされないまま幕引きとなりましたが、やっぱり・・・
帝國大学医学部教授・エルウィン・フォン・ベルツ先生の給仕として働くことになった
まだ頭に髷を残す葛城冬馬13歳。
日本びいきかつミステリー好きなベルツ先生の手足となって、不思議な事件を解明していきます。
・・・タイトルからダジャレかよ。
と思いましたが、元々ダジャレって語感の似た言葉のかけあわせだから、
聞き間違いもダジャレだと・・・あってんじゃん(笑)
この話、何が面白いかって文明開化からこっち、
日本が近代化していく史実をうまく織り込んでいるとこと。
大森貝塚のエドワード・シルヴェスター・モースとか、
ナウマン象のハインリッヒ・エドムント・ナウマンとかが出てくるし、明治政府の要人も。
連作にして欲しいくらいでした。
絵画修復師かつ花師・佐月恭壱のシリーズ第2弾。
絵画修復師ものと言えば柄刀一氏の御倉瞬介シリーズがありますが、
あちらは純粋な修復をメインとしているのに対して、
こちらはかなりダークな部分にまで話が及びます。
どっちかって言うと、ハードボーイルドにカテゴリしてもいいんじゃないかと思うくらいに。
今作では佐月恭壱がかつて愛した女性や、絵画修復師以前の話など、
佐月恭壱の過去が少し明らかになってきました。
冬の狐が出ているんだから、いずれは蓮丈那智も・・・と思っていただけに残念。
さて、いよいよラストに向けてです。
短編シリーズで続いてきた香菜里屋がいよいよ閉店です。
店の常連や周囲の人々にも終わりや新たな旅立ちがあり、
ついには香菜里屋もひっそりと店を閉じます。
その後、前作でにおわされていたマスター工藤の過去の話が明かされ、
氏の作品のオールスターによる静かなグランドフィナーレへ。
決してなくなったわけではない香菜里屋ですから、
また別の形での再登場もあっただろうに・・・。
最後に本当の意味での未完となった「双獣記」という作品が収束されていましたが、
山田風太郎かっ!(いや、「背表紙の友」で名前が出ていたからというわけではありませんが)
聖徳太子が天草四郎的立場でヒールってすごいじゃん!
面白い作品になっただろうになぁ。
正確には浅野里沙子氏との共著になります。
(実際には3分の2くらいで北森鴻氏は絶筆されたそです)
雅蘭堂店主・越名集治の手により蓮丈研究室に持ち込まれた「阿久仁村異聞」と題された文書。
その内容に興味を抱いた面々が考察を重ねるうち、外部からの様々な圧力や事件が・・・。
蓮丈那智シリーズではおなじみのたたら伝説から邪馬台国の成り立ち(位置ではなく)
大和国家形成に至るまでの考察がこの話の中核となります。
物語の中に真実を埋め込む形式は島田荘司氏の「ネジ式ザゼツキー」がありますが、
あれよりはわかりやすいです(笑)
しかし、この文書を作るだけでもかなりの労力が必要だったことは想像に難くありませんね。
越名集治、宇佐見陶子、そして蓮丈那智が絡んだ「狐罠」から続く明治期の闇の遺産。
もう逃れられない運命なのでしょう。
作中、「歴史書はなんのために作られる」という話も出てきましたが、
あれは「時の権力者に都合のいいように」作られるというのが正解でしょうね(笑)
となると、古事記も日本書紀も信じていいものやら。
しかし、それを根拠にしなければ歴史を語れないのも事実。
タイムマシンができない限り、このジレンマは続きますな。
作中に出てきた島根と鳥取の合弁。
近代史はほぼ知らないので初耳だったんですけど、実際にはそんなに単純な話でもないんですね。
さて、次作は本当に未完のまま刊行された「暁英 贋説・鹿鳴館」と
蓮丈那智シリーズ最後の作品「天鬼越」ですね。
その前に北森作品を読み返してみるのも一興かと。
文庫派の私にはようやくその波が追いついてきました。
ぶぶ漬け伝説の謎―裏(マイナー)京都ミステリー (光文社文庫)
- 作者: 北森 鴻
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/08/06
- メディア: 文庫
他のシリーズとは違ってコメディ色が強く、強引な部分もありますが、
有名な「ぶぶ漬けでも・・・」の台詞はなぜ生まれたかなど、こと考察については侮れない。
それにしてもムンちゃんはどこまで迷惑な存在なんだろう・・・
こちらは音をメインテーマとしたミステリ。
義理の兄・最上圭一が残した音のメッセージの謎を追うリツ子。
その先々にはそれぞれの小さな物語があり、
さらにその先には彼女自身に関わる大きな秘密が・・・。
所々に伏線が張られていたので、最上圭一の死の真相は惜しくもかすっていました。
が、実際の真相は・・・なんか後述の雅蘭堂店主・越名集治の姿がだぶって(笑)
そして最後の場面。
うさぎがどうなるか明かされないまま幕引きとなりましたが、やっぱり・・・
帝國大学医学部教授・エルウィン・フォン・ベルツ先生の給仕として働くことになった
まだ頭に髷を残す葛城冬馬13歳。
日本びいきかつミステリー好きなベルツ先生の手足となって、不思議な事件を解明していきます。
・・・タイトルからダジャレかよ。
と思いましたが、元々ダジャレって語感の似た言葉のかけあわせだから、
聞き間違いもダジャレだと・・・あってんじゃん(笑)
この話、何が面白いかって文明開化からこっち、
日本が近代化していく史実をうまく織り込んでいるとこと。
大森貝塚のエドワード・シルヴェスター・モースとか、
ナウマン象のハインリッヒ・エドムント・ナウマンとかが出てくるし、明治政府の要人も。
連作にして欲しいくらいでした。
絵画修復師かつ花師・佐月恭壱のシリーズ第2弾。
絵画修復師ものと言えば柄刀一氏の御倉瞬介シリーズがありますが、
あちらは純粋な修復をメインとしているのに対して、
こちらはかなりダークな部分にまで話が及びます。
どっちかって言うと、ハードボーイルドにカテゴリしてもいいんじゃないかと思うくらいに。
今作では佐月恭壱がかつて愛した女性や、絵画修復師以前の話など、
佐月恭壱の過去が少し明らかになってきました。
冬の狐が出ているんだから、いずれは蓮丈那智も・・・と思っていただけに残念。
さて、いよいよラストに向けてです。
短編シリーズで続いてきた香菜里屋がいよいよ閉店です。
店の常連や周囲の人々にも終わりや新たな旅立ちがあり、
ついには香菜里屋もひっそりと店を閉じます。
その後、前作でにおわされていたマスター工藤の過去の話が明かされ、
氏の作品のオールスターによる静かなグランドフィナーレへ。
決してなくなったわけではない香菜里屋ですから、
また別の形での再登場もあっただろうに・・・。
最後に本当の意味での未完となった「双獣記」という作品が収束されていましたが、
山田風太郎かっ!(いや、「背表紙の友」で名前が出ていたからというわけではありませんが)
聖徳太子が天草四郎的立場でヒールってすごいじゃん!
面白い作品になっただろうになぁ。
正確には浅野里沙子氏との共著になります。
(実際には3分の2くらいで北森鴻氏は絶筆されたそです)
雅蘭堂店主・越名集治の手により蓮丈研究室に持ち込まれた「阿久仁村異聞」と題された文書。
その内容に興味を抱いた面々が考察を重ねるうち、外部からの様々な圧力や事件が・・・。
蓮丈那智シリーズではおなじみのたたら伝説から邪馬台国の成り立ち(位置ではなく)
大和国家形成に至るまでの考察がこの話の中核となります。
物語の中に真実を埋め込む形式は島田荘司氏の「ネジ式ザゼツキー」がありますが、
あれよりはわかりやすいです(笑)
しかし、この文書を作るだけでもかなりの労力が必要だったことは想像に難くありませんね。
越名集治、宇佐見陶子、そして蓮丈那智が絡んだ「狐罠」から続く明治期の闇の遺産。
もう逃れられない運命なのでしょう。
作中、「歴史書はなんのために作られる」という話も出てきましたが、
あれは「時の権力者に都合のいいように」作られるというのが正解でしょうね(笑)
となると、古事記も日本書紀も信じていいものやら。
しかし、それを根拠にしなければ歴史を語れないのも事実。
タイムマシンができない限り、このジレンマは続きますな。
作中に出てきた島根と鳥取の合弁。
近代史はほぼ知らないので初耳だったんですけど、実際にはそんなに単純な話でもないんですね。
さて、次作は本当に未完のまま刊行された「暁英 贋説・鹿鳴館」と
蓮丈那智シリーズ最後の作品「天鬼越」ですね。
その前に北森作品を読み返してみるのも一興かと。
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